2022年

 

今年も新しい本との出会いを

 

第17回読書会より

「いたいっ!」が うんだ 大発明

 

~ばんそうこう たんじょう ものがたり~

バリー・ウィッテンシュタイン文/クリス・スー絵

こだま ともこ訳/光村教育図書

 

アールさんと結婚したジョセフィーヌさんはぶきっちょさんで、料理をするたび、切ったり、やけどしたり、すりむいたりします。アールさんはジョセフィーヌさんがふきんを手に当てて血を止めている姿がかわいそうで考えました。粘着テープのべたべたしたほうに間をあけて小さく切ったガーゼを置いていく。これがバンドエイドの始まり、100年くらい前のことです。この便利な絆創膏をもっとたくさんの人に使ってほしい!でも、なかなか売れません。第二次世界大戦では何百万個も戦地に贈ったおかげで知られるようになりました。今では子どもたちはキャラクターのついたバンドエイドが大好きです。

 

誰もが知っている便利なものを、戦争抜きで、純粋に素晴らしい発明として紹介できなかったのだろうかと考えてしまいました。            (J.S.)

第17回読書会記録(2月27日)

今回は子ども向けの本が揃いました。もちろん、大人にも驚きや楽しさが伝わる作品です。

 

第16回読書会より

 ナメクジはカタツムリだった?

       武田晋一/写真・文  岩崎書店

 

カタツムリは好きでもナメクジはちょっと苦手という人、多いですよね。私もナメクジには絶対にさわれません。この写真絵本の著者の武田さんもとても苦手だそうですが、カタツムリを調べていくうちにおもしろいことを見つけます。

カタツムリは貝だったのですね。沖縄から北海道のいろいろなカタツムリが登場します。毛が生えているオオケマイマイ。2ミリの大きさのケシガイ(拡大写真の顔がなんともかわいい!)きれいな薄緑色のアオミオカタニシetc…。ほとんどは右巻きで、数少ない左巻きは関東以北に住んでいるそうですよ。

 

表紙写真は沖縄やんばるの森にいるヒラコウラベッコウガイ。ナメクジそっくりです。武田さんはさらに身体の中に小さな殻のあるナメクジを見つけます。さてさて、その関係は? ナメクジが先か、カタツムリが先か。ぜひ読んで確かめてください。(E.T

第16回読書会記録(1月30日)

今回も少人数でしたが、各自紹介したい本が山積みで上記一覧となりました。公共図書館で手に入らないコミックもあり、その話題でもしばし盛り上がり…。電子書籍も普及しつつあるこの頃、「本を読む」とはどういうことか考える時間でもありました。

楽しいので是非ご参加くださいね。

第15回読書会より

タフィー

サラ・クロッサン 作/三辺律子 訳

岩波書店

 

10代の女の子アリソンは、父さんの虐待に耐え兼ね家出をします。古い家で認知症の老女に見つかり、彼女を昔の友人のタフィーと思い込んだ老女。アリソンはタフィーとしてその家に住み始めます。老女との別れを経て、父さんの愛を求めながらも父さんと決別し、また学校へ通い出します。

 

詩の形式で綴られています。父の愛を確証できなくなって自立を決意するアリソンの成長、最後は希望を感じます。           (J.S)

すうがくでせかいをみるの

ミゲル・タンコ 作/福本友美子 訳

ほるぷ出版

  

 「数学」は中学生になってから学びます。でも、公園のジャングルジム、石を投げた水面のわっか、紙飛行機の飛ぶ軌跡、身の回りの楽しいことや不思議なことを考えるのって「数学」なんだね。絵の好きなパパや、実験に夢中のママ、数学で世界を見る子がいたっていいよね! 

 巻末には「数学ノート」があり、手書きのイラストが描かれています。「フラクタル」では植物の花穂、「多角形」ではアイスのコーン、「集合」ではビンの中のキャンディなど、一緒に世界を見てみたくなります。(M.O)

第15回読書会記録(12月19日)

 年末が近づき参加は2名となりました。クリスマスも大掃除もとりあえず置いといて、それぞれが本を紹介し合う楽しい時間となりました。

第14回読書会より

ミシシッピ冒険記 

〈ぼくらが3ドルでお金持ちになったわけ〉

ダヴィデ・モロジット 作/中村智子 訳/岩崎書店

 

20世紀初めのアメリカ南部の沼地バイユー。4人の子どもたちが3ドルを釣りあげた。彼らはカタログ販売でピストル(?!)を注文したが、届いたのは壊れた古い懐中時計だった。その時計はどうやらいわくつきらしい。4人はミシシッピ川を蒸気船でさかのぼり、貨物列車に無賃乗車する。殺人事件うごめくシカゴをめざして。

お酒をのんだり、煙草をすったりする百年前の子どもたち。ちょっとかっこいいテ・トワ、沼地のシャーマンをめざすエディ、心に鎧をまとった少女ジョリー、その弟ティトは口を聞かない黒人の子。彼らを待ち受けていたのは?  

「本書は親からは遠ざけておいたほうがいいかもしれない」

作者のこの言葉から物語は始まる。とっても面白かった!!  (E.T

第14回読書会記録(11月27日)

偶然にも「ミシシッピ」ものが2冊並びました。どちらもわくわくする読み物です。参加メンバーがもっと増えるともっといろんな本に出会えそうです。

第13回読書会より

 ポリポリ村のみんしゅしゅぎ 

蒔田純 作 /おかやまたかとし 絵

 かもがわ出版 

 

 ポリポリ村は観光客がたくさん訪れるステキな村。でも冬の間はドラゴンがやってきて誰も来られなくなってしまいます。村のお金を使ってドラゴンを追い払うか、それともドラゴンが落としていく鱗を加工して村の特産品にするか、選挙で決めることになりました。さて、その結果はいかに? 

 この本は投票結果によって物語の内容が変わるしかけ絵本になっています。親しみやすい絵で、お話自体は低学年でも読むことができますが、ぜひ大人と一緒にどちらに投票したいか考えてから読み進めてほしいです。また、副題は「絵本で選挙を体験しよう」。クラスで実際に選挙をしてみる、という使い方もできると思います。子どもに選挙の大切さを伝える本としておすすめの1冊です。 

第13回読書会記録(10月24日)

令和3年10月。衆議院議員選挙投票日間近の日曜日。今回は子どもたちと民主主義を考えるテーマの本も紹介されました。子どもの貧困や差別・偏見という重いテーマもあります。子どもの本は、子どもだけが読む本ではなく、大人にもわかりやすい本として手に取ってみたいものです。

第12回読書会より

見知らぬ友 

マルセロ・ビルマヘール 作

オーガフミヒロ 絵

             宇野和美 訳/福音館書店 

 

ブエノスアイレスに住む少年の視点から語られる短編集。不思議な友に助けられ、70歳になって、さて??という最初の「見知らぬ友」。「立ち入り禁止」に描かれたアルゼンチンの少年や家族にとってのフォークランド紛争。「失われたラブレター」の話は少年少女から大人の時代へと展開。そしてちらりと顔を見せる独裁政権。1枚の写真をめぐる「クラス一の美少女」は老人ホームで会った老女だったか?

副題は「十個のでっちあげた思い出」。地球の反対側で、日常と非日常が交差する、不思議な、でもほっとする温かみのある物語たち。

1930年代後半にナチスからアルゼンチンに逃れたユダヤ人のコミュニティが今でもあることを初めて知った本です。                       (E.T.)

第12回読書会記録(9月25日)

8月はお休みをした読書会、オンラインとはいえ久しぶりに顔を見ながら本の紹介をしあいました。どれもすぐに読んでみたい本ばかり。

コロナ自粛生活中、外出がしづらいことで本を読む時間ができた人もあったようです。今回の一冊は『見知らぬ友』になりました。

第11回読書会より

 小さな小さなウイルスの大きなはなし

伊沢尚子/坂井治 絵/中屋敷均 監修/評論社

 

 2021年3月出版の科学絵本。昨年3月の緊急休校措置から今、第4回緊急事態宣言中。マスクも手洗いもうがいもみんなでしているのに、全く減らない感染者数。ウイルスって一体何なの?子どもの目線からの疑問に答えます。大きさは?小さいってどの位小さいの?どこにいるの?種類はどれだけあるの?どうやって私達の身体に入るの?どうやって増えるの?ウイルスって全部悪いものなの?感染、突然変異、免疫・抗体・ワクチンの事、分かりやすく解説してあります。私達が今何と戦っているのか、ウイルスがどういう物質なのかを知ったら、自分の出来ることを見つけてしましょう。 (M.T)

第11回読書会記録

前半で甲斐信枝さんの人物・作品について会員による解説が行われました。後半で行った恒例の本の紹介。今回は主に小学生で読める本が並びました。1年半にわたるコロナ禍、ウイルスについての本もいろいろ出る中、絵本ではありますが、中学年~大人まで楽しめる本が紹介されました。

バラエティに富んだラインナップ、皆さんも読んでみませんか。

甲斐信枝さんの作品を読みなおす

『あしなが蜂と暮らした夏』甲斐信枝/中央公論新社

昨年末、甲斐信枝さんの90歳の新刊『あしなが蜂と暮らした夏』を八王子市立図書館で発見。ご健在が嬉しく読了。う~ん、すごい。作品を読み直しました。

女学校時代に出会った師の言葉「限りなく謙虚であれ、限りなく傲慢であれ」を生涯貫いた人生を知りました。『たんぽぽ』『雑草のくらし』などの絵本27冊と、単行本や雑誌を読んでみて、5年、9年、最低でも必ず1年という年月をかけて、粘り強く観察とメモとスケッチを重ねて、絵本を完成し、子どもたちに自然の摂理を伝えてきた人と改めて思いました。

 

1930年広島県生まれ。15歳で1945年。戦争をしっかり知る世代です。今年の4月の「婦人公論」掲載の最後の言葉「人間は摂理に従っていては生きていけない、特殊な生き物。どのくらいその歴史は続くのだろう。そんなに長く続かないんじゃないか。たった数十年ですが、自然とつきあい続けていると、人間ってどれほどのものだろうと思うのです。」が印象に残りました。(E.T.)

第10回読書会より

TEEN(新潮文庫)

           石田衣良/新潮社刊

 

 高層ビルと木造の長屋が共存する町、月島に住む4人の14歳の少年たちの1年が8編の短編集として読める。病気、家族の問題、ジェンダー、異性交遊、性への関心、死の問題。彼らを取り巻くものは多岐に渡り、日々の生活に突然やってくる。彼らは、このヒリヒリする問題に仲間と共に、時には一人で対面する。

全編を通して日本の都会版スタンドバイミーのような感じがいい。普段無邪気な中学生も少しずつ大人になっていく。早く大人になりたい焦りと、大人になってしまったら今の自分とは変わってしまうのではないかという恐れの中にいる。まさに若い大人である。その中で生きるのが青春なのだろう。

 

 2003年に書かれているが、ガラケーの描写以外に特別古さは感じない。むしろ、今の中学生よりも自由な気がする。続編に「6TEEN」がある。(M.T)

第10回読書会記録

今回も少人数での実施となりました。

今年度は会員外の参加者も募るため、読書会にテーマ設定をすることを考えています。他の人はどんな本を面白がるのかな?同じ本なのに感じ方って違うんだな、などと、本の話題を入り口におしゃべりを楽しみませんか。

 

第9回読書会より

ガザ―戦争しか知らないこどもたち

         清田明宏/ポプラ社

 

この本が出版された2015年当時、ガザ地区には180万人のパレスチナ難民が暮らしていました。2014年のイスラエルからの爆撃でガザ市民1,600人が死亡し、そのうち子どもが500人でした。負傷者は11,000人、子どもは3,300人でした。学校は150校以上破壊されました。今年、再び爆撃で200人以上が死亡、子どもが50人以上です。

この本には血を流している写真はありません。誰かを非難する言葉もありません。破壊された町・家の写真と、爆撃され青空の見える部屋に置いてあるベッドの写真に、ここで暮らしていると説明があります。

2021年時点で13歳以上の子どもはすでに爆撃を4回経験しています。子どもたちは夢を語ります。ガザの人は言います。「それでも、私たちはガザを再建する」                        (J.S.)

第9回読書会記録

子どもたちが世界へ目を向ける本が並びました。大人も一緒に考えたい本ばかりです。

第8回読書会より

チンパンジーはいつか人間になるの?

    (おどろき動物進化学)

 熊谷さとし/偕成社

 

 サザエさんの漫画で、ワカメちゃんが動物園のチンパンジーの檻の前で、チンパンジーが人間になるのを待っているというのがありました。ところが人間とチンパンジーは12千年以上前は同じ祖先でも、途中500万年くらい前に枝分かれしてそれぞれ独自の進化をしてきたので、いつまで待っても進化したチンパンジーは出来るが、人間にはならないと分かりやすいイラストで説明してあります。

  進化の過程が、適者生存・自然選択・人為選択と様々なかたちがあること等わかりやすく書かれています。情報量が多すぎて一冊に詰め込みすぎかな?という気もするのですが、興味があるところだけの拾い読みが可能な本です。                       (J.S)

「『のび太』という生き方」

横山泰行 作/アスコム

 のび太ほどネガティブなイメージの子はいないのではないだろうか?お昼寝大好きなぐうたらで、泣き虫で勉強も運動も上手くできない。更にはジャイアンにいつもイジメられて、ドラえもんに頼りきりである。 

 富山大学名誉教授の横山泰行さんは、15年に渡って『ドラえもん』を研究・分析した結果、「のび太は人生の勝ち組である」という。

 確かにしずかちゃんと結婚する他にものび太は多くの夢を叶えているのだ。ドジで泣き虫なのび太は、一体どこから?どのように?成功を掴んだのだろうか?この本は『のび太の成功メソッド』が漫画の中のエピソードを例に人生の成功を掴むヒントが書かれている。

  ネタバレになってはいけないが、「のび太の引き受ける力」のエピソードが個人的にとても好きである。           (M.T)

『マダム・キュリーと朝食を』

    小林エリカ 作/集英社

  

 2011年の福島原発事故後、放射能汚染により人がいなくなったまち、そこを「マタタビの街」と呼ぶ猫は「光」(放射線)の中に自分のルーツを求める。同時進行で、「光の声が聞こえる」という曾祖母から自分につながるルーツを探す少女の物語。

 1898年、ラジウムを発見したキュリー夫人は当時素手で実験をしていたらしい。彼女が触った物には放射能が付着し、それは研究ノートも例外ではなく、ラジウムの半減期1600年の間存在しているのである。光は時間であり、記憶でもある。猫がさかのぼる時間の中で、エジソンやルーズベルト、X線実験で死んだ動物たち電気処刑の逸話が挟まれ、読破には時間がかかったが、巻末にある「引用・参考文献」にも当たりながら人間の未来を考える題材にしたい。

  前後の見開きにあるモノクロの写真、本文を読み進めながら見返してほしい。                         (M.O)  

第8回読書会記録

年度末の読書会。多忙な時期で参加者が3名でしたが甲乙つけがたく興味深い本が出そろったため、今回は3冊を紹介図書として取り上げました。図書館に予約して、ぜひ読んで見てください。

第7回読書会より

『彼方の光』

シェリー・ピアソル/斎藤倫子訳/偕成社

 

 ケンタッキーの11歳の少年奴隷サミュエルと老奴隷ハリソンは大農園を逃亡しました。サミュエルのお母さんは彼が小さいころ売られてしまい、お母さんの思い出がありません。逃亡奴隷たちが目指すのは自由黒人として生きていくことの出来る北の地です。遠い道のり、最後に貨物列車に忍び込み、着いたところは、エリー湖のほとり。そこから船に乗りカナダへ着くと、自由黒人になったサミュエルのお母さんが待っていました。

  過酷な奴隷の待遇、自由を求めるサミュエルの成長とともに、逃亡奴隷を助ける白人、自由黒人による地下組織の存在。それがつらい物語を読み進めていく希望です。奴隷制度は1865年まで続きましたが、今も奴隷という名こそつかないけれど人権、自由を奪われている人たちがいることも忘れてはいけないと思いました。               (J.S.)

第七回読書会記録

2021年2月28日、読書会も7回目となりました。今回は会場に2名、自宅からのZoom参加3名での開催。いろいろな形での楽しみ方を研究中です。一冊の本から広がる世界の楽しさを味わいました。

第6回読書会より

『わかめ』

海のナンジャコリャーズ②)        

青木優和/文 畑中富美子/絵 

田中次郎/監修 仮説社

わかめのお味噌汁、好きですか?私たち日本人はよく食べますよね。でもわかめは東アジアの海にだけ生える海藻で、世界には食べたことがない人が多くて、しかも「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っているんだって。びっくり!どうして?と思う人はぜひこの絵本のページをめくってみて。

めかぶは食べたことある?ぬるぬるしていて、栄養がたくさんあるのだけど、わかめの根っこのすぐ上にあって、なんと「わかめのもと」を作るところだそうです。わかめの赤ちゃんがどこで生まれて、どんなふうに広がっていくのか、とってもよくわかりますよ。めかぶがわかめの一部だったこともこの絵本を読んで、初めて知りました。

  ぜひ生のわかめを手に入れて調べてみたいな。わかめのお料理や養殖のこと、それからゆでるときれいな緑色にかわること、色と光の関係も興味深い。クイズにもチャレンジしてね。(E.T

第六回読書会記録

令和3年、一回目の読書会。通算6回目となりました。Zoomでのやり取りもだいぶ慣れてきています。今回も各自思い入れのある本を熱く紹介し合いました。

第5回読書会より

14歳の水平線」(双葉文庫)

     椰月美智子 作 / 双葉社

 夏休み、征人と加奈太の父子二人で父の実家である天徳島へ帰省する。中二男子限定合宿に参加する事になった加奈太。初対面の6人で二泊三日の合宿が始まる。思春期ど真ん中の息子にどう接していいかわからない父征人。久しぶりの実家で自身の14歳の日々も蘇る。

 

 夏休みって成長するんだよなぁ。皆さんの持っている14歳の記憶とはどんなものでしたか?炬燵でアイスを食べる感じで、寒い冬に夏のジリジリとした暑さを感じる本を読んでみてください。                   (M.T)

第五回読書会記録

今回は年末、12月27日に開催しました。Zoomの制限時間内ぎりぎりの40分、各自3分間で本をすすめ合いました。早速図書館へ予約をかけたはず。

第4回読書会より

アルカイダから古文書をまもった図書館員

  ジョシュア・ハマー 横山あゆみ=訳

  紀伊國屋書店 2017 

 欧米の歴史学者・哲学者は「アフリカの黒人(原文通り)は『文盲』で『歴史を持たない』」としてきた。しかし、14世紀や16世紀の旅行家の旅行記にリマのトンブクトゥでは写本制作・書物収集が盛んだったと記されている。学問の盛んな地域だった。19世紀にフランスの植民地スーダンになると、その書物は人々の家の奥にと隠された。独立後、アブデル・カデル・ハイダラたちは隠された古文書を求め国内中をまわり収集し、図書館を作り始めた。その後イスラム原理主義者が台頭し、古文書もその軍に狙われ始めると秘密裡に古文書を運び出し分散して地方に隠す。

平和が訪れた今、アブデルたちは隠した古文書をトンブクトゥに戻し、図書館を再建し始めている。歴史・文化を守り抜いた人たちの話です。(J.S)

 

 

戦場の秘密図書館    ~シリアに残された希望  

    マイク・トムソン/著 小国綾子/編訳 

             文溪堂 2019

                    

   シリアの南部ダラヤ。アサド政府軍に包囲され、破壊された街の夜明け。銃声の中をそっと歩く人影がいる。14歳の少年アムジャドだ。周囲を見廻すと、崩壊した建物の地下へと下りていく。そこには思いがけない空間があった! 少年は「司書長」。

 

201012月にチュニジアで始まった「アラブの春」はシリアにも拡がり、20128月のダラヤの虐殺、包囲で、8万人の人口は8千人に減少した。しかし瓦礫の中から命がけで14000冊もの本を救出し、ひっそりと「秘密図書館」を開館した大学生たちがいた。食料も水も物資もひっ迫する中、「体が食べ物を必要とするように、魂には本が必要」との思いで人々に本を貸し出す。201610月に政府軍の爆撃と略奪でこの図書館は消滅するが、若者たちはあきらめなかった。その希望の行動をぜひ本で確かめてみて。シリア内戦はまだ終結していない。(E.T

第4回読書会記録

秋の3連休。今回は土曜日の午後に開催しました。今回もバラエティに富むリストになりました。気になる本があったら是非図書館へ!

第3回読書会より

「空気」を読んでも従わない

     生き苦しさからラクになる

  鴻上 尚史  岩波書店  2019

 

 なんで先輩に従わないといけないのだろう?どうして周りの人に合わせないといけないのだろう?正に自分が中学の時に考えていたことだと手に取る。いや、今もそうかもしれない。

  私は断ることが苦手なのだ。ずっと自分が弱いからだと思っていた。が、全然違ったのだ。本書の中でも書いてあった。落ち着いて考えることができ、もっと「自分が大事にしている思いのせいだ」と自分を知ることもできた。 

自分がスッキリしたところで、「現中学生はどうなのだろう?」と思い、中三の息子にも読んでもらった。「そもそも俺、生き苦しくないよ。この本の言うことはわかるし、空気を読むこともあるけど、自分を変えることはない。周りに流されるけど、そのために自分を変えることもない。」そうだ。生き苦しさを感じるすべての人にお勧めする。        (M.T)

 

第3回記録 10月25日

  

今回は4名の参加。人数が少ない分それぞれの紹介図書やそれにまつわる様々な話題でじっくり楽しむことができました。

第2回読書会より

『ミライの授業』

   瀧本 哲史 講談社 2016

 

「きみたちは未来の住人であり、大人たちは過去の住人なのだ。」

 

そんな言葉で始まるこの本は、当時京都大学客員准教授だった著者が、14歳の人たちへ向けたものです。「なぜ勉強しなければならないのか」という問いに対して著者は、今私たちが暮らしている21世紀の世界は魔法の国であり、その魔法の基礎を学ぶ場所が学校なのだと言っています。そんな輝かしい未来を作っていくための勉強であり、いい学校や就職先を得ることが目的ではないというのです。各章のテーマに沿って著名人たちの伝記をとりあげつつ「授業」は進みますが、彼らのプラス面だけでなくマイナス面にも言及しており、なるほどとうなずくところも多くありました。変化の大きい時代に何を目印に歩んでいけばいいのか、考えるきっかけを与えてくれそうな本です。

(M.S)

 

『ほんとうのリーダーのみつけかた』

   梨木香歩 岩波書店 2020

 

 新しい感染症が蔓延したことで私たちは「いままでの生活」を見直すチャンスを得た。この混乱のなかで国は国民をどう守っていくのか、自分たちはそのリーダーをどう選ぶのか。

『僕は、そして僕たちはどう生きるか』(梨木香歩・理論社・2011)が2015年に岩波書店で文庫化された際に、若い人にむけて行った講演がもとになっているという。近年の政治状況を思い起こしながら読むと、作者が若者に伝えたかったメッセージがより意味を持ってくるだろう。

(この理由で、大人にもぜひ読んでほしい。)

 「群れ」「リーダー」「チーム」と、具体例を示して解説していてわかりやすい。自分の中に「もう一人の自分」を持つ、「チーム自分」という考え方。周りに流されない生き方をしようと訴える。75年前の戦争の反省を忘れず、憲法に則った平和な社会を守り、築いていく若者へのエールだと思う。

(M.O)

第2回記録 2020年9月27日

Zoomによる読書会第二回。紹介本にはテーマを決めていませんが、今回は中学生以上へお勧めの本が多く出ました。大人にもお勧めしたい本ばかりです、読んで見てくださいね。

第1回読書会より

『なくなりそうな

  世界のことば』

  吉岡乾 著  西 淑 イラスト 

  創元社

 

 世界で話されていることばはおよそ7000あるそうです。英語や中国語のように広い地域で話されている「大きな」ことば*もあれば、少人数の人しか使っていない「小さな」ことば*もあります。この本には、世界じゅうの小さなことばが集められています。ことばと文化は切り離せません。特に、特定の地域で少数の人々が用いる言葉には、その背景に文化が色濃く残っています。

 かわいいイラストと共に紹介される単語の成立ちを読んでいると、そのことばを話している人々の暮らしが立ち上がってくるようです。紹介言語は話者数順に並んでおり、それは90万人から始まり最後には5人そして0人で終わります。なかには私たちになじみの深いことばも…。ことばが失われたときその文化はどうなっていくのか。そんなことに想いをはせながら、じっくり読みたい本です。            *本書「著者まえがき」より 

 

          (M.S.)                      

第1回記録2020年8月23日